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科学研究費基盤研究(S):近代アジアにおける水圏と社会経済 ― データベースと空間解析による新しい地域史の探求

研究の背景・目的

現代社会において、加速度的に進行しつつある各国・各地域社会経済の相互依存の深化・「グローバル化」の下で、各国史の単なる総和としてではなく、世界各地が結びつきを深めてきた起源と過程を明らかにすることが求められている。一方、日本のアジア史研究では、19世紀以降の世界経済の緊密な連鎖の下での、アジア諸国の変化は、18世紀までの域内貿易や人的交流が拡大したという相互依存の深化という点でも、工業化を含む経済の相互連関性という点でも、地域的な問題として捉えられることが、1980年代以降の「アジア交易圏論」で指摘され、以後、アジア域内での商人ネットワークや貿易、沿海都市に関する研究成果が蓄積されてきた。

そこでの方法的課題は、各地に関する実証研究を、沿海部のみならず内陸部も含むアジア域内での自然環境や社会経済の多様性の空間的配置との関係から位置づけ、統合することにある。様々な地域の視角と事例を組み込んだ、世界の歴史に関するメタ・ナレティブ(総合的叙述)の構築は、近代アジア史研究においても、課題として残されている。

地域としてのまとまりを持ったアジア史を構想する上で、一つはモンスーンと季節的降雨が広域にわたって大きな影響を及ぼすこと、もう一つは域内の多くの地域が、海・河川・湖沼等からなる水系に囲まれた地形、すなわち「水圏」であるということという、域内社会経済を相俟って規定する水をめぐる二つの条件を挙げることができる。本プロジェクトは、モンスーン気候と水圏という気候・自然環境との関係に着目して、19-20世紀アジアの社会経済のあり方を明らかにしていく。

研究の方法

メタ・ナレティブを構築する上で、気候変動等の地球規模での問題に対応する過程で開発されてきた、ビッグデータ(各地域の様々な情報源に相互参照可能なメタ・データを付した上で構築した大容量のデータベース)の技法は注目される。

また、個別の問題に関する各地の情報を比較統合するには、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)等を利用して、関連情報を緯度経度からなる位置に関するIDを持ったデータ(空間データ)としてデータベース(DB)化し解析する手法が有効である。

本プロジェクトでは、アジア各地を研究対象とする歴史家が工学者と協働し、気候と水圏に関係する3つの問題群①「自然環境・現象」、②「生産・生活」、③「移動・流通」に関する空間情報DBを構築し、空間解析を応用することによって、各地での気候・水圏・社会経済の相関関係を解明していく。

研究の意義

時系列・地点間・問題群間の分析の組み合わせから、国より下位の行政や民間アクターを含めて、現地・国家・地域が交差する多元的アジア社会経済の構造と動態を明らかにしていく。

また、空間情報DBという新たな研究リソースを構築し、空間解析の応用という研究手法を開拓する。

これらを達成するために、事例研究からなるアウトプットの集約というアプローチを離れて、多分野・多地域の研究者がDBと分析手法を共有し緊密に協働する研究体制をとることで、共同研究の一つのモデルを提示していきたい。

本研究課題について

本研究はJSPS科研費17H06116の助成を受けたものです。

お問い合わせは、hysoc_info(at)e.u-tokyo.ac.jpまでお願いします。(at)は@に替えてください。

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